ドライバーの飲酒運転は、人命を奪い、企業の信用を損なう重大な問題です。
物流業界においても、ドライバーの飲酒運転は深刻な問題であり、近年では企業の社会的責任が問われるケースも増えています。
本記事では、物流業界における飲酒運転の現状と課題、企業が取り組むべき対策について解説します。安全な物流業界を実現するために、ドライバーと企業が協力して取り組むことが重要です。
物流業界を支えるドライバー
現代社会において、物流業界はまさに生命線のような存在です。私たちの生活に必要な物資は、すべて物流によって運ばれてきます。食料品、日用品、衣料品、家電製品、自動車、建設資材など、あらゆるものがドライバーの手によって届けられます。
ドライバーは、社会を支える縁の下の力持ちと言えるでしょう。長距離、深夜、悪天候など、過酷な労働環境にもかかわらず、責任感を持って様々な荷物を運んでいます。
しかし、その影には、深刻な問題が潜んでいます。それが、ドライバーの飲酒運転です。
人命を奪い、社会を揺るがす「飲酒運転」の恐怖
飲酒運転は、人命を奪い、社会を揺るがす凶悪な犯罪です。判断力が鈍り、正常な運転操作が不可能になるため、重大な事故を引き起こす可能性が非常に高くなります。
2023年、全国で約2,000件の飲酒運転による人身事故が発生し、そのうち、重傷事故は323件、そして112人の尊い命が失われています。物流業界においても、ドライバーの飲酒運転による事故は後を絶ちません。
事業用自動車による飲酒運転事故件数は、平成24年以降横ばいの状況が続いていますが依然として年間30件以上の事故が発生しています。
これらのデータは、物流業界における飲酒運転が決して他人事ではなく、深刻な問題であることを示しています。
飲酒運転による事故は、被害者だけでなく、加害者にとっても人生を大きく狂わせてしまうものです。刑罰を受けるだけでなく、社会的な信用を失い、二度と元の生活に戻れない可能性もあるのです。
飲酒運転の危険性
アルコールは少量でも脳の機能を麻痺させます!
飲酒運転とは、ビールや日本酒などの酒類やアルコールを含む飲食物を摂取し、アルコール分を体内に保有した状態で運転する行為です。
お酒に酔うと、顔が赤くなる、多弁になる、視力が低下するなどの変化が現れ始め、さらに知覚や運転能力をつかさどる両側の前頭葉の後半部が抑制されることにより、同じ話を繰り返したり、足元がふらついたりします。
このように、飲酒時には、安全運転に必要な情報処理能力、注意力、判断力などが低下している状態になります。
具体的には・・・
●気が大きくなり速度超過などの危険な運転をする
●車間距離の判断を誤る
●危険の察知が遅れたり、ブレーキペダルを踏むまでの時間が長くなる
など、飲酒運転は交通事故に結びつく危険性を高めます。
酒に弱いと言われる人だけでなく、酒に強いと言われる人でも、低濃度のアルコールで運転操作等に影響を及ぼすことが各種調査研究により明らかになっています。
トラックドライバーの飲酒運転の背後に潜む原因とは
トラックドライバーの事故の背景には以下の問題が指摘されています。
トラックドライバーの事故の背景 ●長時間労働による疲労 ●悪質なドライバーの存在 ●企業側の対応不足など |
これらの問題点を解決し、安全な物流業界を実現するためには、企業とドライバーが一体となって取り組むことが重要です。
長時間労働と疲労:過酷な労働環境が招く悲劇
物流業界におけるドライバーの飲酒運転の背景には、長時間労働による疲労が大きな要因として挙げられます。
過酷な労働環境は、ドライバーの判断力を低下させ、安全運転への意識を薄れさせます。疲労によって集中力が途切れたり、判断力が鈍ったりすると、事故につながるリスクが高まることに・・・。
特に、夜間や早朝の配送業務は、疲労が蓄積しやすい時間帯です。さらに、長距離運転や荷物の積み降ろし作業などの負担も加わり、ドライバーの疲労は深刻化します。
そして、長時間労働による疲労は、ドライバーの健康にも悪影響を及ぼすのです。睡眠不足やストレスは、体力的、精神的にドライバーを追い詰め、安全運転を阻害する要因となります。
企業は、ドライバーの労働時間を適切に管理し、疲労軽減のための対策を講じる必要があります。
悪質なドライバーの存在:倫理観の欠如と法令軽視
一部の悪質なドライバーの存在も、物流業界における飲酒運転の大きな要因です。
倫理観の欠如や法令軽視により、飲酒運転の危険性を認識せず、故意に酒気帯び運転を行ってしまうドライバーが存在します。
このようなドライバーは、再発防止も難しく、業界全体にとって大きなリスクとなります。
企業は、採用時の審査を厳格化し、倫理観や法令遵守意識の高いドライバーを育成する必要があります。
企業側の対策不足:安全意識の低さと体制の脆弱性
企業側の対策不足も、飲酒運転の発生に大きく影響しています。
安全意識の低さや体制の脆弱性により、ドライバーへの教育や指導が十分に行われていないケースがあります。
また、飲酒運転に対する罰則が軽い場合や、再発防止策が不十分な場合も、ドライバーの意識改善につながりません。
企業は、安全意識を高め、飲酒運転を厳しく取り締まる体制を構築する必要があります。
物流業界全体における意識改革の遅れも、飲酒運転根絶の大きな課題となっています。
業界全体で意識改革を進め、飲酒運転根絶に向けた取り組みを加速させる必要があります。
自動車運送事業者における飲酒運転防止策
飲酒運転は絶対に許されない犯罪です。
安全な物流業界を実現するためには、事業者、運行管理者、ドライバーが一体となって飲酒運転根絶に取り組むことが重要です。
適正な点呼の実施
ドライバーは、運行開始前と終了後に、運行管理者による対面点呼を受けなければなりません。点呼時には、目視による確認に加えて、アルコール検知器を用いて酒気帯びの有無を確認します。必要に応じて、運行の中止や交代運転者の手配を行います。
ドライバーへの指導及び監督の実施
事業者はドライバーに対して、法令遵守に関する知識や運転技能、知識を習得させるための指導を行います。
飲酒が運転に及ぼす影響や、アルコール依存症の危険性について理解を深め、健康管理の重要性を指導します。また、不規則な業務形態による生活習慣病のリスクについても指導し、健康的な生活習慣の形成を促します。
ドライバーの意識管理
ドライバーは安全運転のために以下の点に注意する必要があります。
飲酒運転を絶対にしない
乗務前日を含め、飲酒は控えましょう。アルコールは体内に残留するため、体内で分解するために約3時間~4時間をかける必要があります。
体調管理を徹底する
疲労や睡眠不足は、判断力や操作能力を低下させ、事故につながる可能性を高めます。十分な睡眠と休息をとりましょう。
法令遵守を徹底する
道路交通法や労働安全衛生法などの法令を遵守し、安全運転に関する知識を常に学び、運転しましょう。
飲酒運転は、人命を奪い、企業の信用を損なう重大な犯罪です。
事業者、運行管理者、ドライバーが一体となって取り組むことで、飲酒運転根絶を目指しましょう。
安全な業界実現のための未来への挑戦
ドライバーと企業が協力して取り組むことで、飲酒運転根絶を目指し、安全な物流業界を実現することができます。
安全な物流業界の実現
安全な物流業界の実現には
①法令遵守意識の向上
②労働環境の改善
③安全運転意識向上
以上が重要なポイントになります。
技術革新の活用
自動運転技術やドライブレコーダーなどの技術革新を活用することで、将来的には飲酒運転のリスクをさらに低減できる可能性があります。
様々な取り組みを進めることで、飲酒運転根絶を目指し、安全な物流業界を実現することができるでしょう。
まとめ
飲酒後に車両等の運転は絶対にしてはいけません!
ドライバーの飲酒運転は、物流業界にとって深刻な課題です。企業とドライバーが協力して、安全な物流業界を実現するために、積極的に取り組む必要があります。
飲酒運転の危険性を認識し、絶対に飲酒運転をしない、させない、許さないという強い意志を持つことが重要です。
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飲酒運転は決して許されない行為です。人命を奪い、企業の信用を損なう重大な犯罪であり、改めて飲酒運転の深刻さを痛感しました。安全な物流業界は、ドライバーのみが抱える使命ではなく社会全体で築き上げていくものだと思います。一人一人が問題意識を持ち、行動を起こすことが重要です。