現代社会において、物流は私たちの生活に欠かせないインフラとなっています。

EC市場の成長やグローバル化の進展により、物流業界はますます複雑化し、効率化と高度化が求められています。

そんな課題を解決する鍵として注目されているのが、物流アルゴリズムです。

そもそも、アルゴリズムとは?

アルゴリズムをイメージした画像。□→□→◇などのイラストが描かれている。

 アルゴリズムとは、問題を解決するための手順や計算方法を指します。
日常的な問題解決においても使われる言葉ですが、特にコンピュータサイエンスや数学の分野では、
問題を解決するための具体的な手順や方法を指します。

アルゴリズムは、誰が実行しても同じ結果が得られるように、明確で論理的な手順を定めたものです。
コンピュータを使ったプログラムにおいては、アルゴリズムが特に重要です。

なぜなら、コンピュータは大量の計算を高速に行えるため、
適切なアルゴリズムを選択することで処理時間を劇的に短縮できるからです。
アルゴリズムの選択や最適化は、プログラミングにおいて重要なスキルの一つであり、
効率的なプログラムを作成するために欠かせません。

物流アルゴリズムとは?

 物流アルゴリズムとは、物流業務を効率化するための手順計算方法です。
具体的には、配送ルートの最適化、倉庫内オペレーションの最適化、需要予測、配車計画、在庫管理など、
様々な課題解決に活用されています。

従来の物流は、経験や勘に基づいて運営されることが多かったのですが、物流アルゴリズムの登場により、
データに基づいた意思決定が可能になりました。
膨大なデータを分析することで、より精度の高い最適化を実現できるのです。

物流アルゴリズムの種類

 物流アルゴリズムは、様々な最適化手法に基づいて開発されています。
 代表的な手法としては、以下のようなものがあります。

  • 線形計画法: 制約条件のもとで、ある関数を最大化または最小化する手法です。
    配送ルート最適化や倉庫レイアウト最適化などに用いられます。
  • 動的計画法: 複数の意思決定段階からなる問題を、段階的に解いていく手法です。
    在庫管理や配車計画などに用いられます。
  • メタヒューリスティック法: 膨大な組み合わせが発生し難度の高い最適化問題を解くための経験的に解いていく手法です。大規模な問題の最適化などに用いられます。

近年では、AI(人工知能)や機械学習などの技術を取り入れた高度な物流アルゴリズムも開発されています。
これらのアルゴリズムは、過去のデータから学習し、リアルタイムの変化にも対応できるため、
より柔軟かつ精度の高い最適化を実現することができます。

物流アルゴリズムの導入メリット

ロボットが段ボールを運んでいる画像。物流アルゴリズムをイメージしている。

物流アルゴリズムを導入するメリット
コスト削減: 配送コスト、在庫コスト、人件費などのコストの削減。
納期短縮: 荷物をより早く顧客に届けることができます。
サービス向上: 顧客満足度の向上。
環境負荷低減: CO2排出量などの環境負荷の低減

そのため具体的には、以下のような効果が期待できます。

アルゴリズムを導入したことによる効果
配送ルートの最適化:
最短距離で配送ルートを算出することで、ガソリンの使用量や配送時間の削減
倉庫内オペレーションの最適化:
商品の配置やピッキング作業の順序を最適化することで、作業効率の向上
需要予測:
過去の販売データや天候データなどを分析することで、将来の需要を予測し、
最適な在庫量の維持
配車計画:
複数のドライバーと車両を効率的に活用することで、配送コストの削減
在庫管理:
商品の在庫を最適なレベルに保ち、欠品や過剰在庫を防ぐことができます。

物流アルゴリズムの導入事例

物流アルゴリズムは、様々な企業で導入されています。

★企業の導入例

  • Amazon:
    Amazonは専任科学者の研究にから配送ルート最適化や倉庫内オペレーションの最適化にアルゴリズムを活用し、物流効率を大幅に向上させています。
    また、ドローン配送や自動倉庫など、物流の未来を担う技術にも積極的に取り組んでいます。
  • ヤマト運輸:
    配送センターで扱う荷物を予測する新たなデータ分析システムを導入し、
    荷物の配送状況をリアルタイムで追跡できる「クロネコナビ」システムにも
    アルゴリズムを活用しています。また、時間帯指定配送やコンビニエンスストア受取サービスなど、
    顧客ニーズに合わせた様々な配送サービスを提供しています。
  • Uber Eats:
    配達員の稼働状況を把握し配達リクエストを解析、リクエストの差配を算出する
    アルゴリズムを活用し、迅速なフードデリバリーを実現しています。
    また、料理を注文してから調理までの工程をリアルタイムで追跡できる機能なども提供しています。

これらの企業は、物流アルゴリズムを導入することで、物流効率の向上顧客満足度の向上を実現しています。

物流アルゴリズムの今後の展望

物流アルゴリズムは、AIや機械学習などの技術進歩と相まって、今後も進化していくことが期待されます。

  • より高度な最適化:
    より複雑な制約条件を考慮した最適化や、リアルタイムなデータに基づいた最適化など、
    より高度な最適化が実現されるようになります。
  • 自律型物流システムの構築:
    AIやロボットなどの技術を活用し、人間の手を介さずに荷物を運搬したり、
    倉庫内作業を行ったりする自律型物流システムの構築が進むことが期待されます。

そして具体的には、以下のようなシステムが考えられます。

  • 自動運転トラック:
    荷物を自動で運搬するトラックです。すでに実用化に向けた取り組みが進められており、
    2024年1月現在では自動運転レベル2まで実用されています。※
    将来的には長距離輸送にも活用されることが期待されます。
  • 倉庫内ロボット:
    商品の搬送やピッキング作業を行うロボットです。
    人の作業を必要としない単純作業を行い、作業効率の向上に貢献することが期待されます。
  • ドローン:
    荷物を配送するドローンです。
    すでに一部地域で実用化されていますが、将来的にはより広範囲な地域での利用が期待されます。

これらのシステムは、物流アルゴリズムと連携することで、より効率的な物流を実現することができると考えられます。

ビッグデータの活用

 ビッグデータとは、膨大な量多様な種類高速処理の3つの特徴を持つデータの集合体です。
ビッグデータは、以下の3つのVと呼ばれる特徴によって定義されます。

Volume(量)
 従来のデータベースでは処理しきれないほど膨大な量のデータです。具体的には、ペタバイト(PB)やエクサバイト(EB)といった単位で表されるデータ量を指します。
Variety(多様性)
 テキスト、画像、動画、音声、センサーデータなど、様々な種類のデータが含まれます。従来のデータベースでは扱いにくい構造化されていないデータや半構造化データも含まれます。
Velocity(速度)
 データの発生や更新が非常に高速で、リアルタイムな分析や処理が必要となります。ソーシャルメディアやIoT機器などから生成されるデータなどがこれに該当します。

物流に関する様々なデータを収集し、分析することで、
より精度の高い物流アルゴリズムを開発することが可能になります。
また、近年ではVeracity(正確性)とValue(価値)を加えた【5つのV】をビックデータの特徴とも言われています。
具体的には、以下のようなデータが活用されます。

  • 配送データ: 配送ルート、配送時間、配送コストなどのデータです。
  • 在庫データ: 商品の種類、数量、在庫回転率などのデータです。
  • 需要データ: 販売データ、天候データ、イベント情報などのデータです。

これらのデータを分析することで、物流における課題をより深く理解し、
より効果的な対策を講じることが可能になります。

サプライチェーン全体の最適化

サプライチェーンとは、原材料の調達から製造、販売、消費に至るまでの流れ全体を指します。

物流アルゴリズムは、単体の企業だけでなく、サプライチェーン全体を最適化するために活用することができます。具体的には、以下のような取り組みが考えられます。

  • サプライチェーン全体の可視化: サプライチェーン全体の流れを可視化することで、無駄や非効率な部分を発見することができます。
  • サプライチェーン全体の最適化: サプライチェーン全体を一つのシステムとして捉え、全体的な効率を向上させることができます。

これらの取り組みは、サプライチェーン全体の競争力を強化し、顧客満足度を向上させることに貢献することが期待されます。

★サプライチェーンについて詳しくはこちらの記事をご覧ください!

まとめ

ホワイトボードにグラフなどの資料を貼り4人で話合いをしている画像。

物流アルゴリズムは、物流業界の効率化イノベーションを推進する重要な技術です。
今後も、AIや機械学習などの技術進歩と相まって、物流アルゴリズムはさらに発展していくことが期待されます。

物流アルゴリズムは、物流業界だけでなく、様々な産業に大きな変革をもたらす可能性を秘めています。
今後の物流の進化から目が離せません。

筆者の感想

物流アルゴリズムは、物流業界の未来を大きく変える可能性を秘めた技術だと感じました。物流アルゴリズムが普及することで、配送コストの削減、納期の短縮、顧客満足度の向上など、様々なメリットが期待できます。