近年、物流業界において効率的な輸送手段として注目されているRORO船とフェリー。どちらも車両を輸送できる船舶ですが、実はいくつかの重要な違いがあります。
この記事では、RORO船とフェリー輸送の違いについて詳しく解説します。
そもそもRORO船とは?
RORO船はRoll-on/Roll-off shipの略称で、車両甲板を備え、トラックやトレーラーなどの車両をそのまま自走で乗り降りできる貨物船のことです。
RORO船は、海上運送法や内航海運業法に基づき申請され、
貨物または12名以下の旅客を載せる船舶の中で、貨物を自走して船内に積み下ろすためのゲート(ランプウェイ)を備えたものです。
RORO船とLOLO船
ややこしいのですがRORO船と似た船舶の種類として、LOLO船があります。
LOLO船は、ガントリークレーンを使用して港の岸壁で貨物の荷役作業を行う船舶を指します。
✅RORO船とLOLO船の特長比較表
項目 | RORO船 | LOLO船 |
正式名称 | Roll-on/Roll-off ship | Lift-on/Lift-off ship |
日本語名称 | ローロー船 | ロロ船 |
荷役方式 | 車両ごと船内に乗り降り | クレーンでコンテナを吊り上げる |
利点 | 荷役時間が短い | 積み重ねが可能 |
欠点 | 船舶構造が複雑 | 荷役時間が長い |
得意な貨物 | トラック、トレーラー、農産物 | コンテナ、雑貨 |
船舶構造 | 船首部または船尾部にランプウェイ | 船舶全体にクレーン |
代表的な船舶 | 瀬戸内海のフェリー 青函トンネル航路の船舶 | コンテナ船 |
その他 | フェリーとしても利用される | 長距離輸送に適している |
RORO船のメリット
海上輸送、特にRORO船やフェリーを利用した輸送の大きなメリットは、航行中にドライバーが休息できるため、陸上輸送よりもドライバーの労働時間を削減し、労働力の効率化や無人化が可能なことです。
これにより、2024年問題への対処や改善基準の遵守が容易になります。
💡他にもこんなメリットがあります!
◎荷役時間の短縮
車両ごと積み下ろしできるため、コンテナ船に比べて荷役時間を大幅に短縮できます。短時間で多くの車両を輸送することが可能になり、輸送コストの削減にもつながります。
◎輸送時間の短縮
RORO船はコンテナ船よりも速いため、生鮮食品や付加価値の高い商品など、時間短縮が求められる貨物輸送に適しています。海上輸送における時間短縮は、陸上輸送における時間短縮にもつながります。
◎柔軟性
様々な種類の車両に対応できるため、輸送する貨物の種類に柔軟に対応できます。トラック、トレーラー、農産物、建設機械など、様々な種類の貨物を輸送することができます。
◎環境への負荷軽減
RORO船は、コンテナ船に比べて燃料消費量が少ないと言われています。また、車両を自走で船内に乗り降りできるため、クレーンなどの荷役機械が必要ありません。
◎ドライバー不足の解消
トラックドライバー不足が深刻化する中、RORO船はドライバーの輸送を必要としないため、ドライバー不足の解消に貢献できます。
◎海上輸送の安定性
天候の影響を受けにくいというメリットもあります。コンテナ船は荒天時には港に入港できない場合がありますが、RORO船は比較的安定して運航することができます。
RORO船のデメリット
RORO船は、便利な輸送手段ですがデメリットもあります。
以下のデメリットを理解したうえで、輸送手段を選択することが重要です。
◎積載効率の低下
RORO船は、トラックやトレーラーをそのまま積み込むため、コンテナ船のようにコンテナを縦積みすることができません。そのため、積載効率が低くなります。具体的には、コンテナ船の約60〜70%程度と言われています。
◎重量制限
多くのRORO船では、船尾及び船首にランプウェイを備えています。しかし、このランプウェイの強度によって、積載できる重量に制限が生じてしまうことがあります。特に、大型のトラックやトレーラーを積み込む場合は注意が必要です。
◎港湾施設の必要性
RORO船の積み下ろしには、専用のランプウェイや岸壁が必要です。そのため、RORO船の運航を希望する港湾には、これらの施設を整備する必要があります。
◎リードタイムの延長
RORO船は、陸上輸送に比べてリードタイムが長くなります。これは、船舶の運航スケジュールや港での積み下ろし作業に時間がかかるためです。
◎運賃
RORO船の運賃は、コンテナ船よりも高くなります。これは、RORO船の運航に必要なコストが高いためです。
◎悪天候への影響
RORO船は、悪天候の影響を受けやすいというデメリットもあります。特に、波浪の影響を受けやすく、船の揺れが大きくなることがあります。そのため、荷物の破損や損傷が発生するリスクが高くなります。
◎セキュリティ
RORO船は、コンテナ船に比べてセキュリティ面で脆弱であるという指摘もあります。これは、車両ごと船内に積み込むため、コンテナ船のように厳重な管理が難しいことによります。
◎環境への影響
RORO船は、他の船舶と同様に、大気汚染や海洋汚染などの環境問題を引き起こす可能性があります。
💡RORO船のデメリットを補うために、いくつかの施策が考えられています。 ・船舶の改良 積載効率を向上させるための船舶の改良や、重量制限を増量するためのランプウェイの強化などが進められています。 ・港湾施設の整備 RORO船の運航に対応した港湾施設の整備が進められています。 ・モーダルシフトの推進 鉄道やトラックとのモーダルシフトを推進することで、リードタイムの短縮やコスト削減を図ることができます。 ・セキュリティ対策の強化 荷物の盗難や不正アクセスを防ぐためのセキュリティ対策が強化されています。 ・環境対策の推進 NOxやSOxなどの排出量削減や、エネルギー効率の向上など、環境対策が進められています。 |
これらの施策により、RORO船のデメリットを克服し、より便利な輸送手段として利用していくことが期待されています。
RORO船とフェリーの違い
RORO船とフェリーの最も大きな違いは・・・
RORO船が主に貨物を運搬するのに対し、フェリーは貨物だけでなく多くの旅客も輸送すること。
フェリーでの貨物輸送は無人で行われることが一般的です。
しかし最近は労務管理の厳格化により、長距離フェリーでは乗船時間がドライバーの休息として認められる特例があります。そのため、有人トラック乗務員の利用が増加傾向になっています。
また、フェリーでは客室やレストラン、浴室などの設備が充実しており、旅客にとってリーズナブルな船旅の魅力に注目が集まっています。
RORO船とフェリーの比較表
項目 | RORO船 | フェリー |
目的 | 貨物輸送 | 旅客輸送 |
客室 | 基本的にない | ある |
車両の種類 | トラック、トレーラーなど大型車両 | 乗用車、オートバイなど小型車両 |
その他 | - | 旅客向けの設備(レストラン、売店など)がある |
代表的な航路 | 瀬戸内海、青函トンネル航路 | 国内各地 |
まとめ
RORO船とフェリーは、それぞれ異なる利点と欠点を持つ便利な輸送手段です。どちらを選ぶべきかは、輸送する貨物の種類や量、移動距離、予算などを考慮して決める必要があります。
トラックドライバー不足が深刻化する中、RORO船はドライバーの輸送を必要としないため、ドライバー不足の解消に貢献することができると思います。環境負荷軽減や労働力不足の解消といった課題から、RORO船とフェリーのさらなる活用が期待できるでしょう♪